この記事は、本教室の指導者の私見であり、合気道の一般論では無いのでご注意ください。

はじめに

合気道には様々な効用がありますが、子供にとっては向き不向きが強く分かれる種類の武道ですので、 保護者の方は、お子様が稽古を楽しめているか時々ご確認ください。

また、稽古を続けることを希望していないお子様に合気道を習わせることはおすすめしません。

以下は上記のお願いの背景について説明したものです。

少し長い文章になりますが、特に合気道の経験が無い方で、 お子様に合気道を習わせようとお考えの方は、ご一読いただけると幸いです。

合気道は多くの子供にとって面白くないかもしれません

私は小さい頃から合気道をやっています。

当時、合気道を始める際に先生から以下のように言われました:

合気道は本来「大人向け」の武道で、 どちらかというと他の武術をやったことがある人が習うべきものなので、 子供に教えている道場は多くありません。

今はだいぶ状況は異なり、合気道は広く子供に指導されていますが、 現実問題としてどちらかというと「大人向け」である点は実のところあまり変化していません。

合気道がなぜ「大人向け」かというと、構成している技法が高度だからです。

例えば、合気道の基本的な技の一つに「隅落とし」という技があります。

※以下の動画で山口清吾師範が最初にかけている技が隅落としです(Aikido Yamaguchi Dojo Archiveより)

これは柔道の「隅落とし」と基本的には同じ技法です。

※柔道の技をかけている動作は以下の動画がわかりやすいかと思います(講道館公式チャンネルより)

柔道では「隅落とし」は別名「空気投げ」と呼ばれており、 技の一つとして型には残っているものの、 実践レベルで使いこなした人はほとんどいない、高度な技とされていて、 試合で決まり手になることは非常に稀です。

これを合気道では基本原理を学ぶための技の一つとして教えています。

合気道で比較的早いうちにこの技を習うのは、 技がかかる理がシンプルでわかりやすいからですが、 同時にそれが働くために必要な条件を整えるのが難しいのも事実なのです。

この例から推測できる通り、合気道は「強くなる」という観点では、 短期~中期では非常にコストパフォーマンスが悪い技術体系になっていて、 投入する必要がある努力に対して、実際に得られる「強さ」があまり多くありません。

このため、合気道の技の殆どは子供の間に使いこなすことが困難で、 実質的には形のみを習得するということになり、 習い事としての実態は武術というよりも舞踊に近くなります。

この特徴のため、子供にとって合気道は向き不向きが別れやすい傾向があります。

少なくとも万人が楽しく稽古できる性質のものではないのではないかと私は思っていますので、 保護者の方はお子様の意見をよく聞いた上で稽古に通わせるようお願いします。

合気道は子供にとって意味がないのでしょうか?

一方、子供が合気道から習うことの効果は比較的明確です:

  1. 合気道の受け身の技法は、日常生活の怪我のリスクを劇的に低下させる効果があります。

    負傷を防ぐためには反射的な身のこなしが必要ですが、 そういった身のこなしは定期的な訓練以外では身につきません。

    昔はリスクの高い種類の遊びで自然に身についた可能性が高いこれらの技能を、 現代の子供に身につけてもらうには合気道の稽古は最適なものの一つです。

  2. 合気道の体捌きは、子供のうちだと習得が容易です。

    子供のうちに相手に技を効かせることはできないかもしれませんが、 体捌き自体の習得は体の癖が少ない子供のうちのほうが容易です。

    体捌きは合気道以外にも様々な場合に応用できます。

その他にも、正座などの正しい姿勢が身につきますし、 (みなみ野合気道教室ではあまりやっていませんが)呼吸法(息を整える技術の方)や、 黙想などによる集中力の向上が得られる場合もあります。

また、合気道の稽古方法は左右対称に行うことが強く推奨されているので、 子供のうちに習うスポーツとして、ネガティブな副作用が少なく、その点では優秀です。

子供から見た合気道の魅力について

そして、私自身が子供の頃に、なぜ合気道の稽古を続けたのかというと、 それは単純に面白かったからです。

私が面白いと思っていた点を振り返ると、以下のようなものになりそうです:

  1. すでに書きましたが、技が効かなくとも、多くの動作はできるようになります。

    大人たちは、子供の技が効かないのは当たり前だと知っています。

    子供のうちは動きができるようになることが主目的ですので、それができれば褒めてくれますし、 複雑な動作を正確にできるようになることの中には面白さがあります。

    振り返ると、私自身が合気道を続けていた理由は、この面白さが中心だったと思います。

  2. 自分にはできなくとも、その技を使える人が現実にいます。

    このため、目標を設定することは可能です。

    ものすごく難易度が高いことの達成を、 自分のペースで少しづつでも良いから目指すという体験は、 競技がある種類の武道では得難いものです。

  3. 正確に動けた場合には、子供の力でも大人を投げることが可能です。

    合気道の技そのものは筋力に対する依存が低いため、 再現性が高くはないかもしれませんが、実際に子供の技が大人に効くこともあります。

    こういった体験にも面白さがあったように思います。

このあたりの面白さを伝えられると良いな、と思いつつ日々試行錯誤しています。

最後に

ここまで文章をお読みいただきありがとうございました。

こんなことを言っても、合気道が具体的にどんなものかは、見ないとわからないかもしれません。 合気道に興味がある方は一度見学にいらしてください。

見学の申込みについては、こちらの連絡先にて随時お受けしています。